結論:広告は「旅行前」か「旅行中」かで選ぶ
訪日客向けの広告は、出す場所によって届く相手のタイミングが違います。旅行の計画を立てている段階の人に届く広告と、すでに日本に来て「近くのお店」を探している人に届く広告では、役割がまったく異なります。まず、自分が増やしたいのが「予約」なのか「その場での来店」なのかを決めると、選ぶべき広告が絞り込めます。
・旅行前の予約・認知を増やしたい(宿泊施設・予約制の体験など)→ SNS広告・OTA内の広告
・多くの運用型広告は予算を自分で決められるため、少額から試しやすい
・広告の前に、地図やWebサイトなど「受け皿」の情報を整えることが前提
インバウンド広告の主な種類
| 種類 | 届くタイミング | 向いている目的 | 向いている業種の例 |
|---|---|---|---|
| Google広告(マップ・検索など) | 旅行中・旅行直前 | 近くにいる人の来店、店名やジャンルで探す人の獲得 | 飲食店、観光施設、小売 |
| SNS広告(Instagram・Facebookなど) | 旅行前・旅行中 | 写真や動画での認知、行きたい場所リストに入れてもらう | 宿泊施設、体験、写真映えする飲食店 |
| OTA内の広告・販促 | 旅行前(宿泊先を比較中) | OTAの検索結果で目立たせる、予約の獲得 | 宿泊施設 |
| 動画広告(YouTubeなど) | 旅行前 | 雰囲気や体験の魅力を伝える | 体験、観光施設、宿泊施設 |
| 紙・屋外の媒体(空港・観光案内所など) | 旅行中 | 地域に来た人への案内 | 観光施設、飲食店 |
※届くタイミングや向いている業種は一般的な目安です。広告の設定によって変わります。
Google広告:旅行中の「近くの○○」に届く
Google広告は、Googleマップや検索結果などに表示される広告です。配信する地域を指定でき、広告文の言語や言語の設定によって、その言語を使う人に届けやすくできるため、「札幌市内にいる、英語を使う人」のように絞って届けられます(言語の扱いはキャンペーンの種類によって異なり、仕様が変わることもあるため、最新の公式案内で確認してください)。旅行中は地図アプリで近くのお店を探す人も多いと考えられるため、その場での来店を増やしたい業種と相性が良い広告です。
SNS広告:旅行前の「行きたい」をつくる
InstagramやFacebookなどのSNS広告は、写真や動画で魅力を伝えるのが得意です。旅行の計画を立てている人に「ここに行きたい」と思ってもらう、保存してもらうといった役割に向いています。国・地域や年齢、興味関心などで配信先を絞れる点も特徴です。
OTA内の広告・販促:宿泊先を比べている人に届く
宿泊施設の場合、OTAの中で検索結果の表示を目立たせる広告や販促プログラムが用意されていることがあります。すでに宿泊先を探している人に届くため予約に近い一方、仕組みや費用はOTAごとに異なります。利用する際は各OTAの施設向け案内で条件を確認しましょう。OTAごとの特徴は楽天トラベル・じゃらん・一休の違いでも整理しています。
費用の仕組み:主な課金方式
インターネット広告の多くは「運用型広告」と呼ばれ、決まった掲載料を払うのではなく、表示やクリックに応じて費用がかかります。主な課金方式は次のとおりです。
| 課金方式 | 費用がかかるタイミング | 主な広告 |
|---|---|---|
| クリック課金 | 広告がクリックされたとき | Google広告(検索・マップなど)、SNS広告の一部 |
| インプレッション課金 | 広告が一定回数表示されたとき | SNS広告、動画広告など |
| 成果報酬型 | 予約などの成果が発生したとき | OTAの販促プログラムの一部など |
| 掲載期間型 | 掲載する期間に応じて | 紙・屋外の媒体、一部のWeb媒体 |
運用型広告は、1日あたりや期間あたりの予算を自分で設定できるのが一般的です(日によっては設定額を上回って配信されることがあるなど、予算の扱いはサービスごとに異なります)。そのため、「まず少額で試し、反応を見てから増やす」という進め方がしやすくなっています。広告運用を外部に依頼する場合は、広告費とは別に運用の手数料がかかることがあるため、見積もりの内訳を確認しておきましょう。
データで見る:少額の広告でどこまで届くか
enrike編集部の運営会社が、2026年の夏〜秋に札幌市内の飲食店で運用した訪日客向けGoogle広告(P-MAX、英語・韓国語・繁体字中国語、複数期間の配信)の集計では、次のような結果でした。
| 指標 | 今回の事例 |
|---|---|
| 1回の配信期間(約1〜2か月)あたりの広告費 | 10万円未満(数万円〜10万円) |
| 表示回数(全期間合計) | 100万回規模 |
| クリック単価 | 10〜20円 |
| クリックから来店行動につながる割合 | 10〜15% |
| 来店行動1件あたりの費用 | 150〜200円 |
※数値は特定の店舗が分からないよう幅で表記しています。「来店行動」は、ルート案内の表示など来店につながる操作として計測した値で、来店数そのものではありません。業種・立地・時期・広告の設定によって結果は大きく変わり、同様の成果を保証するものではありません。
この事例では、表示のほとんどがGoogleマップ上で、来店行動の多くもマップ経由でした。1回の配信期間あたり10万円未満という規模でも、言語ごとの反応の違いを比べられるだけのデータが集まっています。広告は「大きな予算がないと始められないもの」ではなく、小さく試して、反応を見ながら判断できるものだと考えると取り組みやすくなります。
予算の決め方:4つのステップ
- 目的と指標を決める:「旅行中の来店」なら地図でのルート案内や電話、「予約」なら予約数というように、何を増やしたいかと、その数え方を決めます。
- 1か月で試せる額を決める:失敗しても経営に響かない範囲で、1か月分の上限を決めます。運用型広告そのものは、最初から大きな予算を組まなくても始められます。
- 言語や配信先を分けて比べる:言語ごとにキャンペーンを分けるなど、どこに効いたかが分かる形で配信します。全部をまとめると、何が良かったのか判断できなくなります。
- 数期間で判断する:1期間だけの結果は、時期や天候、イベントの影響を受けます。今回の事例でも、期間によって言語ごとの効き方が入れ替わることがありました。2〜3期間の傾向を見て、予算の配分を変えましょう。
業種別:最初に試すならこの広告
| 業種 | 最初に試すなら | 理由 |
|---|---|---|
| 飲食店 | Googleマップ・検索に出る広告 | 旅行中に「近くで食べられる店」を探す人に届く |
| 宿泊施設 | OTA内の販促、SNS広告 | 宿は旅行前に予約されることが多く、比較の段階で目に留まることが大切 |
| 観光・体験施設 | SNS広告と、Googleマップ・検索の広告の組み合わせ | 旅行前に「行きたい」と思ってもらい、旅行中に場所を探す人も逃さない |
宿泊施設の場合は、OTAだけに頼らず、公式サイトでの予約につなげる導線も一緒に整えておくと、広告の効果を活かしやすくなります。考え方は直予約を増やすステップで紹介しています。
広告を出す前に確認したいこと
広告の効果が出やすい状態
- Googleマップの営業時間・写真・基本情報が最新
- 外国語の口コミに返信している
- 英語などで、メニューや予約方法が分かるページがある
先に整えたほうがよい状態
- 地図の情報と実際の営業がずれている
- リンク先のWebサイトが日本語のみ
- 来店・予約後の案内(注文方法、館内ルール)が日本語のみ
広告はあくまで「見つけてもらうきっかけ」です。クリックした先の情報が分かりにくいと、費用をかけても来店や予約につながりにくくなります。施設ページの写真や説明の整え方はOTAの施設ページ最適化の手順も参考にしてください。
よくある質問
まとめ:目的で選び、小さく試して判断する
・運用型広告は予算を自分で決められ、少額から試しやすい
・今回の事例では、1期間10万円未満でも言語別の反応を比べられるだけのデータが集まった
・広告の前に、地図やWebサイトなど受け皿の情報を整える
インバウンド広告は、種類の多さに迷いがちですが、目的とタイミングで分ければ選択肢は絞られます。まずは「何を増やしたいか」を一言で書き出し、1か月で試せる予算を決めるところから始めてみてください。
※本記事は2026年10月時点の一般的な情報と、札幌市内の飲食店での広告運用データ(数値は幅で表記)をもとにした編集部の見解です。特定のサービスの利用を勧めるものではなく、同様の成果を保証するものではありません。広告サービスの仕様・料金体系は変更される場合があるため、最新の内容は各サービスの公式案内でご確認ください。
