結論:訪日客は「地図で探して、地図で決める」
旅行中の外国人観光客は、土地勘のない場所で「今いる場所から行けるお店」を探します。そのとき開くのは、旅行前に読んだガイドブックよりも、手元のスマートフォンの地図アプリであることが少なくありません。地図の上で店名・写真・口コミ・営業時間を見比べ、そのままルート案内を押して向かう――この一連の流れが、訪日客の来店の典型的なパターンです。
enrike編集部の運営会社が、2026年の夏〜秋に札幌市内の飲食店で運用した訪日客向けGoogle広告(P-MAX、英語・韓国語・繁体字中国語、複数期間の配信)を集計すると、この傾向がはっきり表れていました。
・来店につながる行動として計測した操作(ルート案内の表示など)の6〜7割もマップ経由だった
・Google検索からの表示は1割未満と少ないが、クリック後に来店行動まで進む割合は30〜40%と高かった
・つまり、地図上の情報を整えることが、広告を出すかどうかに関わらず集客の土台になる
※数値は特定の店舗が分からないよう、幅を持たせて表記しています。「来店行動」はルート検索や電話など来店につながる操作の計測値で、実際の来店数そのものではありません。広告の設定・時期・業種・立地によって結果は大きく変わるため、あくまで一つの事例として参考にしてください。
なぜGoogleマップが訪日客集客の入口になるのか
旅行中は「近くの○○」で探す
旅行中の行動は、出発前の情報収集と違って「今、この近くで」が前提です。お腹が空いた、雨が降ってきた、次の予定まで1時間ある――こうした場面で、訪日客は地図アプリを開いて周辺を探します。地図上で目に入るのは、ピンの位置、店名、星の評価、写真の1枚目、営業中かどうか。ここで候補に残らなければ、どれだけ良いお店や施設でも選ばれにくくなります。
検索で探す人は少数でも、行き先がほぼ決まっている
前述の運用データでは、Google検索からの表示はごく一部でしたが、クリック率は5〜10%、クリックした人が来店行動まで進む割合は30〜40%と、マップ(クリック率1〜2%、来店行動まで5〜10%)より高い水準でした。店名やジャンル名で能動的に調べる人は、すでに「行くかどうか」をほぼ決めている段階だと考えられます。
ただし、検索の人も最後は地図でルートを確認して向かいます。検索で見つけてもらう場合でも、着地点となるのは結局、地図上のプロフィールです。
国・地域によって使う地図アプリが異なる
Googleマップは多くの国・地域の旅行者に使われていますが、中国本土からの旅行者は普段、Google以外の地図アプリを使っている場合があります。今回のデータは英語・韓国語・繁体字中国語(台湾・香港など)の配信によるものです。自施設に多い国・地域の旅行者が何で情報を探しているかは、来店時の会話や口コミの言語から確かめておくと安心です。
データで見る:言語ごとに反応はこれだけ違う
同じ運用データを言語別に見ると、「表示される」「クリックされる」「来店行動につながる」の関係が、言語によって異なっていました。
| 配信言語 | 表示の割合 | クリック単価 | 来店行動につながる割合 | 来店行動の割合(全体比) |
|---|---|---|---|---|
| 英語 | 3〜4割 | 20〜30円 | 10〜15% | 5〜6割 |
| 韓国語 | 4〜5割 | 10〜20円 | 5〜10% | 2〜3割 |
| 繁体字中国語 | 1〜2割 | 20〜30円 | 10〜15% | 2〜3割 |
※札幌市内の飲食店での運用データ(2026年夏〜秋)の集計。数値は幅で表記。
英語は欧米だけでなくアジア各地の旅行者にも届きやすい言語で、今回のデータでも来店行動の数が最も多い「基本の言語」でした。韓国語は少ない費用で多く表示・クリックされる一方、来店行動にはつながりにくい傾向がありました。繁体字中国語は表示の割合こそ小さいものの、英語に近い効率で来店行動につながっています。
ここから言えるのは、「よく見られている言語」と「来てくれる言語」は一致するとは限らないということです。地図上の情報を多言語で整えるときも、写真やメニューの説明をどの言語で補うかを決める際の参考になります。
訪日客向けにGoogleビジネスプロフィールを整える7項目
Googleマップに表示されるお店や施設の情報は、Googleビジネスプロフィール(旧Googleマイビジネス)で管理します。まだオーナー確認をしていない場合は、まずオーナー確認を済ませましょう。そのうえで、訪日客の目線で次の7項目を見直します。
- 基本情報を正確にする:名称・住所・カテゴリ・営業時間・定休日を、実態とそろえます。臨時休業や季節営業は特別営業時間で忘れずに反映します。地図を見て来たのに閉まっていた、というのが訪日客にとって最も残念な体験です。
- 「入口が分かる」写真を入れる:外観、入口、看板、建物の何階にあるか。地図の案内で近くまで来ても、ビルの中や路地の奥にある店は見つけにくいものです。料理や客室の写真に加えて、迷わず入れる写真を用意します。
- 写真で中身が伝わるようにする:言葉が通じなくても、写真なら伝わります。看板メニュー、店内・館内の雰囲気、提供の様子など、「何ができる場所か」が写真だけで分かる構成にします。
- 説明文は日本語で正確に、要点を短く:訪日客が翻訳機能を使って読むことも想定し、翻訳されても意味が崩れにくいよう、短い文で、固有の言い回しを避けて書きます。説明文にはURLを入れられないため、より詳しい多言語の案内は自社サイトに用意し、プロフィールのウェブサイト欄からつなぎます。
- 属性(設備・決済・サービス)を埋める:キャッシュレス決済、Wi-Fi、予約の可否、テイクアウトなど、訪日客が来店前に気にする項目を設定します。設定できる項目は業種によって異なります。
- 口コミに投稿された言語で返信する:外国語の口コミには、短くても投稿と同じ言語でお礼を返すと、他の旅行者にも「外国人を歓迎している」ことが伝わります。返信の考え方はクチコミ返信の例文と運用のコツも参考になります。
- 第三者の修正提案を定期的に確認する:Googleマップの情報は利用者からの修正提案で変わることがあります。Googleから修正提案の通知が届いたら早めに確認し、あわせて名称や営業時間が意図せず変わっていないか、月に1回は見直しましょう。
業種別:プロフィールで力を入れたいポイント
同じGoogleマップでも、訪日客が知りたいことは業種によって違います。まずは自分の業種の行から手をつけてみてください。
| 業種 | 訪日客が地図で知りたいこと | 重点を置く項目 |
|---|---|---|
| 宿泊施設 | 駅や観光地からの距離、チェックインの方法、周辺の飲食店 | 外観と入口の写真、アクセス、周辺案内のページへのリンク |
| 飲食店 | 今営業しているか、何を食べられるか、入りやすいか | 営業時間の正確さ、看板メニューの写真、決済方法 |
| 観光・体験施設 | 所要時間、予約が必要か、言葉が分からなくても楽しめるか | 体験の様子の写真、予約の可否、多言語の案内の有無 |
宿泊施設の場合、宿そのものはOTAで予約されることが多い一方で、滞在中の訪日客は地図で周辺の飲食店や観光地を探します。宿のプロフィールを整えるのと同時に、周辺のお店と連携して案内できると、滞在の満足度にもつながります。宿の写真や説明文の見せ方は、OTAの施設ページ最適化の手順で紹介している考え方がそのまま使えます。
広告を使うかどうかの判断軸
プロフィールを整えるだけでも、地図上で見つけてもらえる可能性は高まります。そのうえで「もっと多くの訪日客に知ってほしい」「新規オープンで口コミがまだ少ない」といった場合は、Googleマップや検索に表示される広告を検討する選択肢があります。
広告が向いているケース
- 新規オープンや移転で、まだ地図上の評価・口コミが少ない
- 観光客の多いエリアにあり、近くを通る人に知らせたい
- 言語別に反応を確かめながら、少しずつ予算を調整したい
先にやるべきことがあるケース
- 営業時間や写真が古く、来ても情報と実態が違う
- 外国語の口コミに返信できていない
- 来店後の案内(メニューの表記、決済)が整っていない
前述の運用事例では、1回の配信期間(1〜2か月程度)あたり10万円未満の広告費で、来店行動1件あたりの費用は150〜200円の水準でした。ただし、これは特定の条件での結果であり、同じ費用対効果を保証するものではありません。広告は、プロフィールという「受け皿」が整ってから使うほうが、費用を無駄にしにくくなります。
よくある失敗と注意点
- 口コミを対価で集める:割引や特典と引き換えに口コミや高評価を求めることは、Googleのポリシーで禁止されています。自然に投稿してもらえる声かけにとどめましょう。
- 言語ごとに別のプロフィールを作る:同じ場所のプロフィールを複数作ると、情報の矛盾や停止の原因になるおそれがあります。プロフィールは1つにして、正確さを保つことが基本です。
- 写真が料理だけ、客室だけ:中身の写真ばかりで、外観や入口が分からないケースはよくあります。初めて来る人の目線で写真を選び直しましょう。
- 自社サイトが日本語のみ:プロフィールからリンクした先が日本語だけだと、詳しく知りたい人がそこで離れてしまいます。まずは英語の1ページからでも用意しておくと、離脱を防ぎやすくなります。公式サイトの整え方は直予約を増やすステップも参考にしてください。
よくある質問
まとめ:まずは地図上の「受け皿」を整える
・運用データでも、表示の9割以上・来店行動の6〜7割がマップ経由だった
・正確な基本情報・入口が分かる写真・投稿言語での口コミ返信から整える
・広告は、プロフィールという受け皿が整ってから検討する
外国人観光客の集客というと、多言語サイトや広告から考えがちですが、多くの訪日客が最初に目にするのは地図の上の情報です。まずは今週、自分のお店や施設をスマートフォンのGoogleマップで開き、「初めて来る外国人旅行者」の目で見直すところから始めてみてください。
※本記事は2026年10月時点の一般的な情報と、札幌市内の飲食店での広告運用データ(数値は幅で表記)をもとにした編集部の見解です。特定のサービスの利用を勧めるものではなく、同様の成果を保証するものではありません。Googleビジネスプロフィールの機能・ガイドラインは変更される場合があるため、最新の内容は公式ヘルプでご確認ください。
