結論:「迎える準備」→「見つけてもらう」の順で進める
インバウンド集客というと、海外OTAへの掲載や広告から考えがちです。しかし、受け入れの準備が整わないまま予約が増えると、チェックインでの説明の行き違いや、館内ルールをめぐるトラブルが起き、口コミの評価に響くことがあります。訪日客の口コミは、次の訪日客が宿を選ぶ材料にもなるため、最初の数組を気持ちよく迎えられるかどうかが、その後の集客に影響することがあります。
・次に海外OTAとGoogleマップで見つけてもらう
・多言語対応は英語から。到着してから困る情報を優先して翻訳する
・口コミには投稿された言語で返信し、改善につなげる
ステップ1:受け入れの準備を整える
外国人宿泊者の受付の決まりを確認する
旅館業法施行規則では、日本国内に住所を持たない外国人の宿泊者について、宿泊者名簿に国籍と旅券番号を記載することが定められています。あわせて厚生労働省の通知では、旅券(パスポート)の提示を求め、その写しを宿泊者名簿とともに保存することが求められています。チェックイン時にパスポートの提示をお願いする流れを、英語などで説明できるようにしておきましょう。詳しい取り扱いは、厚生労働省の案内や、施設を所管する保健所で確認してください。
決済とキャンセル規定を決める
訪日客の中には、クレジットカードなどのキャッシュレス決済で支払いたいと考える人も少なくありません。現地での支払い方法が限られていると、予約の段階で候補から外れてしまう可能性もあります。あわせて、キャンセル規定や事前決済の有無を、予約時に分かる形で示しておくと、無断キャンセルなどのトラブルを減らしやすくなります。
館内ルールと食事の案内を用意する
大浴場の入り方、館内での履物、夕食の時間、門限など、日本の宿では当たり前のルールも、訪日客には分かりにくいことがあります。写真やイラストを添えた多言語の案内を1枚用意しておくと、説明の手間とトラブルを減らしやすくなります。食事を提供する宿では、アレルギーや宗教上の理由で食べられないものを、予約時やチェックイン時に確認できる仕組みも整えておきましょう。
| 準備すること | 具体例 | 優先度 |
|---|---|---|
| 受付の流れ | パスポートの提示のお願い、宿泊者名簿の記入方法 | 高 |
| 決済・キャンセル | 使える決済手段、キャンセル規定、事前決済の有無 | 高 |
| 館内ルール | 大浴場の入り方、履物、門限、ごみの分別 | 高 |
| 食事 | 食事の時間、アレルギー・宗教上の配慮の確認方法 | 中 |
| 周辺案内 | 近くの飲食店、コンビニ、駅・観光地への行き方 | 中 |
ステップ2:海外OTAで見つけてもらう
訪日客の宿探しでは、海外のOTA(オンライン旅行会社)が使われることが多くあります。代表的なものとして、Booking.com、Expedia、Agoda、Trip.comなどがあり、利用者の多い国・地域や、得意とする旅行者層がそれぞれ異なります。国内OTAの中にも、多言語サイトや海外向けの販売の仕組みを持つものがあります。
| 選ぶときの観点 | 確認すること |
|---|---|
| 来てほしい国・地域 | そのOTAが、狙いたい国・地域の旅行者に使われているか |
| 手数料と契約条件 | 手数料の考え方、支払いのタイミング、最低掲載期間など(各OTAの施設向け案内で確認) |
| 管理の手間 | 在庫・料金をまとめて管理できるか(サイトコントローラーとの連携など) |
| サポート | 日本語での問い合わせ窓口があるか |
最初から多くのOTAに掲載すると、在庫や料金の管理が煩雑になり、二重予約などの原因になりやすくなります。1〜2社から始め、運用に慣れてから広げるのが現実的です。国内OTAの使い分けの考え方は楽天トラベル・じゃらん・一休の違いでも整理しています。
掲載したら、施設ページの写真と説明文を訪日客の目線で見直します。客室の広さ、ベッドの種類、浴室やトイレの有無、駅からの行き方など、外国人旅行者が比較の際に重視する情報を、写真と短い文章で伝えましょう。施設ページの整え方はOTAの施設ページ最適化の手順が多言語でも土台になります。
ステップ3:Googleマップと公式サイトを整える
OTAで宿を見つけた旅行者も、予約の前後にGoogleマップで場所や周辺を確かめることがよくあります。滞在中は、周辺の飲食店や観光地を地図で探します。Googleビジネスプロフィールの基本情報・写真・口コミへの返信を整えておくと、旅行の前にも滞在中にも安心材料になります。
参考までに、enrike編集部の運営会社が2026年の夏〜秋に札幌市内の飲食店で運用した訪日客向けGoogle広告(英語・韓国語・繁体字中国語、複数期間の配信)では、広告の表示の9割以上がGoogleマップ上でした(数値は幅で表記)。飲食店の事例ですが、旅行中の訪日客が地図を頼りに行動していることがうかがえます。宿の周辺の飲食店と案内し合う関係をつくっておくと、滞在の満足度にもつながりやすくなります。
公式サイトは、まず英語の1ページから用意しましょう。宿の特徴、客室、アクセス、館内ルール、予約方法がまとまっていれば十分です。OTAに頼りすぎない予約の導線を育てる考え方は、直予約を増やすステップで紹介しています。
ステップ4:多言語対応の範囲を決める
多言語対応は、すべての情報を翻訳しようとすると続きません。到着してから困る情報を優先し、英語から始めて、宿泊客の多い国・地域の言語を加えていきます。
- チェックインの案内:受付の流れ、パスポートの提示、チェックイン・アウトの時間
- 館内ルール:大浴場、履物、門限、緊急時の連絡先と避難経路
- 食事の案内:時間、場所、アレルギー等の確認方法
- 周辺案内:近くの飲食店、コンビニ、交通
- 公式サイト・OTAの説明文:宿の特徴と予約方法
翻訳には機械翻訳を使ってもかまいませんが、館内ルールや緊急時の案内など、誤解されると困る情報は、可能な範囲でその言語を母語とする人に確認してもらうと安心です。
ステップ5:口コミに応え、改善につなげる
訪日客の口コミは、OTAやGoogleマップで次の旅行者が宿を選ぶ材料になります。外国語の口コミには、短くても投稿された言語でお礼を返しましょう。翻訳ツールを使って一文から始めても十分です。指摘を受けた点は、館内の案内や設備の見直しにつなげます。返信の考え方はクチコミ返信の例文と運用のコツを参考にしてください。
施設タイプ別:力を入れたいポイント
| 施設タイプ | 訪日客に選ばれるポイント | 先に整えたいこと |
|---|---|---|
| 小規模な旅館 | 日本らしい体験、温泉、和室、おもてなし | 館内ルールの多言語案内、食事の配慮の確認方法 |
| ビジネスホテル | 駅からの近さ、清潔さ、分かりやすいチェックイン | アクセスの案内、周辺の飲食店情報 |
| リゾート・観光地の宿 | 景色、体験、長めの滞在 | 周辺の観光・交通の案内、体験の予約方法 |
よくある失敗と注意点
- 準備より先に集客を始める:受け入れの準備が整わないうちに予約が増えると、トラブルや低い評価につながりやすくなります。
- OTAを一度に増やしすぎる:在庫と料金の管理が追いつかず、二重予約の原因になりやすくなります。
- キャンセル規定が分かりにくい:予約時に条件が伝わっていないと、無断キャンセルやトラブルの際に話がこじれます。
- 写真が少ない・古い:言葉で説明しにくい分、写真の役割は大きくなります。客室・浴室・外観・入口の写真を最新にしておきましょう。
よくある質問
まとめ:最初の数組を、気持ちよく迎える
・海外OTAは1〜2社から。施設ページの写真と説明を見直す
・Googleマップと英語の公式サイトで、旅行前も滞在中も安心してもらう
・口コミには投稿された言語で返信し、改善につなげる
インバウンド集客は、準備を一つずつ整えるほど、口コミを通じて次の予約につながっていきます。まずは今週、チェックインから翌朝までの流れを「初めて日本に来た旅行者」の目線でたどり、説明が必要な場面を書き出してみてください。
※本記事は2026年10月時点の一般的な情報と、札幌市内の飲食店での広告運用データ(数値は幅で表記)をもとにした編集部の見解です。特定のサービスの利用を勧めるものではありません。旅館業法の運用や宿泊税、各OTAの契約条件は変更・地域差がある場合があるため、最新の内容は所管の行政機関や各社の案内でご確認ください。
