インバウンド集客の全体像:5つの取り組み
訪日外国人の集客は、「見つけてもらう」だけでも、「迎える準備」だけでも、うまくいきにくいものです。旅行者が施設を知り、比べて選び、実際に訪れて満足し、口コミを残す――この流れのどこかで途切れると、集客の効果は積み上がりません。enrikeでは、インバウンド集客を次の5つの取り組みに分けて整理しています。
| 取り組み | 役割 | こんな悩みに |
|---|---|---|
| ① 受け入れ準備 | 訪日客が困らずに過ごせる土台をつくる | 何から準備すればいいか分からない |
| ② Googleマップの整備 | 旅行中に「近くで」探す人に見つけてもらう | 外国人観光客にお店や施設を知ってもらえない |
| ③ 多言語対応 | 情報を伝わる形にする | 何語に対応すればいいか迷う |
| ④ 広告 | まだ知らない旅行者に届ける | 広告を試したいが、種類も費用も分からない |
| ⑤ 地域連携 | 周辺の施設と一緒に旅行者を迎える | 宿泊客に周辺のお店を聞かれて困る |
・旅行中の訪日客には地図アプリで探す人も多いため、Googleマップの整備は業種を問わず土台になる
・多言語対応は英語から。言語を増やすより、正確に更新し続けることが大切
・広告は小さく試して比べる。地域連携は周辺マップのような小さな形から
データで見る:訪日客は「地図で探す」傾向がうかがえる
enrike編集部の運営会社が、2026年の夏〜秋に札幌市内の飲食店で運用した訪日客向けGoogle広告(P-MAX、英語・韓国語・繁体字中国語、複数期間の配信)を集計すると、次のような傾向が見えました。
- 広告の表示の9割以上がGoogleマップ上で、来店につながる操作(ルート案内の表示など)の6〜7割もマップ経由だった
- Google検索からの表示は1割未満と少ないが、クリックした人が来店につながる操作まで進む割合は30〜40%と高かった
- 言語別では、英語が来店につながる操作の5〜6割を占めた。韓国語は表示やクリックが集まりやすい一方で来店につながる割合は低めで、繁体字中国語は表示は少ないものの英語に近い効率だった
※数値は特定の店舗が分からないよう幅で表記しています。「来店につながる操作」はルート案内の表示や電話など、来店につながる操作の計測値で、来店数そのものではありません。また、表示面の割合は広告の配信設定の影響も受けるため、訪日客全体の行動をそのまま表すものではありません。業種・立地・時期によって結果は変わるため、一つの事例として参考にしてください。
この1つの事例からは、旅行中の飲食店探しが地図を中心になりやすい様子と、「よく見られる言語」と「来てくれる言語」が一致するとは限らないことがうかがえます。以下の5つの取り組みは、こうした傾向を踏まえて整理しています。
① 受け入れ準備:最初の数組を気持ちよく迎える
集客を始める前に、訪日客が困らずに過ごせる準備を整えます。宿泊施設なら外国人宿泊者の受付の決まり(パスポートの確認など)、決済とキャンセル規定、館内ルールの多言語案内。飲食店なら注文方法や支払い方法、メニューの表記。最初に迎えた旅行者の口コミが、次の旅行者の判断材料になるため、ここを丁寧に整えることが後の集客を支えます。
宿泊施設の準備の順番と、海外OTAの選び方は旅館・ホテルのインバウンド集客の始め方で詳しく解説しています。
② Googleマップの整備:旅行中に見つけてもらう
旅行中の訪日客は、地図アプリで「今いる場所の近く」を探すことが少なくありません。Googleビジネスプロフィールの基本情報を実態とそろえ、外観や入口が分かる写真を入れ、外国語の口コミに投稿された言語で返信する。広告を使うかどうかに関わらず、ここが集客の受け皿になります。
整備する7つの項目と業種別の重点はGoogleマップで外国人観光客を集客する方法にまとめています。
③ 多言語対応:少ない言語を丁寧に
多言語対応は英語を土台にし、2つ目以降の言語は、地域に来ている旅行者の傾向・自施設の客層・実際の反応の3つを材料に選びます。すべてを翻訳しようとせず、チェックインや館内ルール、メニューなど「到着してから困る情報」から優先するのが続けるコツです。
言語ごとの反応の違いと優先順位の決め方はインバウンドの多言語対応は何語から?で解説しています。
④ 広告:小さく試して、比べて育てる
広告は、旅行前の予約や認知を増やしたいならSNSやOTAの広告、旅行中の来店を増やしたいならGoogleマップや検索に出る広告と、目的で選びます。多くの運用型広告は予算を自分で決められるため、まずは1か月で試せる額から始め、言語や配信先ごとに反応を比べながら配分を見直します。
広告の種類と費用の考え方はインバウンド広告の種類と費用感、Google広告を言語別に組み立てる方法と、マップと検索の役割の違いはGoogle広告でインバウンド集客で詳しく紹介しています。
⑤ 地域連携:周辺と一緒に旅行者を迎える
訪日客は、宿の周辺で食事や買い物の場所を探すことがよくあります。宿と飲食店が互いの情報を多言語で案内し合えば、旅行者は選びやすくなり、宿は案内の質を高めやすく、お店には新しい入口が増えやすくなります。まずは宿泊客によく聞かれる質問に答えられる、多言語の周辺マップから始めるのが現実的です。紹介料のやり取りや個人情報の扱いには、事前のルールづくりが欠かせません。たとえば、宿泊や交通の手配まで引き受けて対価を受け取る形になると旅行業法の登録が必要になる場合があり、予約のために旅行者の情報を連携先へ伝えるときは、原則として本人の同意が必要です。手数料を受け取る仕組みをつくるときは、観光庁や都道府県の旅行業の担当窓口に確認しておくと安心です。
連携の形と進め方、注意点はインバウンドの地域連携で解説しています。
5つの取り組みでよくあるつまずき
- 一度に全部やろうとする:多言語サイト、複数の海外OTA、広告を同時に始めると、更新や管理が追いつかず、情報が古いまま残りがちです。5つのうち1つずつ、30日単位で進めましょう。
- 「見られた数」だけで判断する:表示やクリックが多い言語・媒体が、来店や予約につながるとは限りません。最終的に増やしたい行動(来店・予約)で比べることが大切です。
- 口コミを放置する:外国語の口コミは、次の旅行者が読む「案内」でもあります。短くても投稿された言語でお礼を返すだけで、外国人を歓迎している姿勢が伝わりやすくなります。
- 自施設だけで完結させようとする:旅行者にとっては、宿・食事・観光がひと続きの体験です。周辺の施設と情報を共有するだけでも、案内の質が変わることがあります。
どの取り組みも、最初からすべてを整える必要はありません。「訪日客が迷う場面を1つ減らす」ことを毎月の目標にすると、無理なく続けられます。
業種別:どこから始めるか
| 業種 | 最初の一歩 | 次に取り組むこと |
|---|---|---|
| 宿泊施設 | 受け入れ準備(受付・決済・館内ルール)と海外OTAへの掲載 | Googleマップの整備、周辺の飲食店との連携 |
| 飲食店 | Googleマップの整備と英語のメニュー | マップ・検索に出る広告を小さく試す、近くの宿との連携 |
| 観光・体験施設 | Googleマップの整備と予約方法の多言語化 | SNS広告で旅行前に知ってもらう |
はじめの30日でやることチェックリスト
- 現状を書き出す:直近数か月の外国人客の国・地域、外国語の口コミの言語、よく聞かれる質問をまとめる
- 受け入れの穴を埋める:決済・注文方法・館内ルールなど、外国語で説明できない場面を1つずつ解消する
- Googleマップを見直す:営業時間・写真・基本情報を最新にし、外国語の口コミに返信する
- 英語の情報を1ページ用意する:施設の特徴、アクセス、予約・注文の方法をまとめる
- 次の一手を決める:2つ目の言語、広告のテスト、地域連携のどれに取り組むかを、ここまでの結果を見て選ぶ
よくある質問
まとめ:準備・発見・伝達・拡大・連携の順に
・札幌の飲食店での運用データでは、表示の9割以上・来店につながる操作の6〜7割がマップ経由だった
・多言語は英語から、広告は小さく試して比べる
・自分の業種の「最初の一歩」から、30日で1つずつ進める
インバウンド集客は、一度にすべてを整える必要はありません。訪日客がどこで迷い、どこで不安を感じるかを一つずつ取り除いていけば、その積み重ねが口コミとなって次の旅行者を呼びます。まずはチェックリストの1つ目、現状の書き出しから始めてみてください。
※本記事は2026年10月時点の一般的な情報と、札幌市内の飲食店での広告運用データ(数値は幅で表記)をもとにした編集部の見解です。特定のサービスの利用を勧めるものではなく、同様の成果を保証するものではありません。各サービスの仕様や法令の運用は変更される場合があるため、最新の内容は公式の案内でご確認ください。
