インバウンドの多言語対応は何語から?英語・韓国語・繁体字の優先順位

「多言語対応をしたいけれど、何語から手をつければいいのか」と迷う宿・飲食店・観光施設の担当者の方へ。結論は、まず英語を土台にし、2つ目以降の言語は「よく見られている言語」ではなく「実際に来てくれる言語」で選ぶのが進めやすい方法です。この記事では、札幌での多言語広告の運用データから見えた言語ごとの違いと、優先順位の決め方、言語ごとに翻訳する範囲を解説します。
目次

結論:英語を土台に、2つ目は「来てくれる言語」で選ぶ

多言語対応は、言語を増やすほど翻訳や更新の手間も増えます。小さな施設やお店が最初から何か国語にも対応しようとすると、情報が古いまま放置されたり、翻訳の品質にばらつきが出たりしがちです。限られた人手と予算で進めるなら、優先順位をつけて、少ない言語を丁寧に整えるほうが結果につながりやすくなります。

POINT・1つ目は英語。英語圏以外の旅行者にも読まれやすく、土台になる
・2つ目以降は、自施設に来ている・来てほしい国・地域から選ぶ
・「よく見られる言語」と「来てくれる言語」は一致するとは限らない
・言語ごとに翻訳する範囲(地図・メニュー・Webサイト・口コミ返信)を決めて、無理なく続ける

データで見る:言語によって「見られ方」と「来てもらい方」が違う

enrike編集部の運営会社が、2026年の夏〜秋に札幌市内の飲食店で運用した訪日客向けGoogle広告(P-MAX、英語・韓国語・繁体字中国語、複数期間の配信)を言語別に集計すると、次のような違いがありました。

配信言語表示の割合クリック単価来店行動につながる割合来店行動1件あたりの費用来店行動の割合(全体比)
英語3〜4割20〜30円10〜15%150〜200円5〜6割
韓国語4〜5割10〜20円5〜10%150〜200円2〜3割
繁体字中国語1〜2割20〜30円10〜15%150〜200円2〜3割

※札幌市内の飲食店での運用データ(2026年夏〜秋)の集計。数値は特定の店舗が分からないよう幅で表記しています。「来店行動」は、ルート案内の表示など来店につながる操作として計測した値で、来店数そのものではありません。

英語:来店行動が最も多い「基本の言語」

英語は来店行動の5〜6割を占め、来店行動につながる割合も10〜15%と安定していました。英語は英語圏の旅行者だけでなく、アジアやヨーロッパなどからの旅行者にも読まれることが多い言語です。最初の1言語として選ぶ理由は十分にあります。

韓国語:よく見られるが、今回は来店行動につながりにくかった

韓国語は表示の割合が最も大きく、クリック単価も10〜20円と最も安い水準でした。一方で、来店行動につながる割合は5〜10%と低めで、来店行動1件あたりの費用は、同じ150〜200円の幅の中で英語より2〜3割高めでした。また、期間によって成果の振れ幅が大きく、ある期間は大きく悪化し、別の期間は改善するといった動きも見られました。

これは韓国からの旅行者が来ない、という意味ではありません。理由は今回のデータだけでは分かりませんが、ふだん使う地図アプリや情報の探し方、業種との相性などによって、同じ広告でも反応の出方が変わることは考えられます。表示やクリックの多さだけで「この言語が有望」と判断しないことが大切です。

繁体字中国語:数は少なくても、英語に近い効率

繁体字中国語(主に台湾・香港などで使われる文字)は、表示の割合こそ1〜2割と小さいものの、来店行動につながる割合は10〜15%で、来店行動1件あたりの費用は英語とほぼ同じでした。今回の事例では、見られる回数は少なくても、対応を検討する価値のある言語でした。

自施設の優先順位を決める3つの材料

上のデータは一つの事例です。実際の優先順位は、地域や業種、施設の特徴によって変わります。次の3つの材料を組み合わせて決めましょう。

材料見る場所分かること
① 地域に来ている旅行者日本政府観光局(JNTO)の訪日外客統計、都道府県や市町村の観光統計その地域に多い国・地域、季節ごとの傾向
② 自施設に来ている人予約の国籍、Googleマップの口コミの言語、来店時の会話すでに来てくれている国・地域
③ 反応の実績Googleビジネスプロフィールの指標、広告の言語別データ、Webサイトのアクセス解析「見られている」と「来店・予約につながっている」の差

①は地域全体の傾向、②は自施設の現状、③は実際の反応です。①で多い国・地域でも、②や③で反応が弱ければ、施設の特徴と合っていない可能性があります。逆に、①では少数派でも②で多い国・地域があれば、そこが自施設の強みかもしれません。

知っておきたい:繁体字と簡体字の違い

「中国語対応」と一口に言っても、文字は大きく2種類あります。読者の国・地域によって使う文字が違うため、どちらに対応するかを先に決めておきましょう。

  • 繁体字:主に台湾・香港などで使われる文字
  • 簡体字:主に中国本土などで使われる文字

また、中国本土からの旅行者は、普段はGoogleマップ以外の地図アプリやサービスを使っている場合があります。Googleマップの整備だけでは届きにくいこともあるため、簡体字への対応を考えるときは、どこで情報を探しているかもあわせて確認すると安心です。

言語ごとに「どこまで翻訳するか」を決める

すべての情報をすべての言語に翻訳する必要はありません。旅行者の目に触れる順番に、翻訳する範囲を広げていくと無理なく続けられます。

翻訳する場所英語2つ目の言語3つ目以降
Googleマップの写真・基本情報必須写真で伝わる構成に写真で伝わる構成に
メニュー・館内案内・料金表示必須対応する写真・ピクトグラムで補う
Webサイト主要ページ1ページから必要に応じて
口コミへの返信投稿言語で返信投稿言語で返信投稿言語で返信
SNSの投稿余力があれば余力があれば—

口コミの返信だけは、どの言語でも「投稿された言語で短くお礼を返す」のが基本です。翻訳ツールを使って一文からでも構いません。返信の考え方はクチコミ返信の例文と運用のコツも参考になります。

多言語対応を進める5ステップ

  1. 現状を把握する:直近数か月の外国人客の国・地域、外国語の口コミの言語を書き出します。
  2. 英語を整える:Googleマップの写真と基本情報、メニュー・館内案内、Webサイトの主要ページを英語で用意します。
  3. 2つ目の言語を決める:3つの材料をもとに、「来てくれている・来てほしい」国・地域の言語を1つ選びます。
  4. 翻訳の品質を確かめる:機械翻訳を使う場合も、可能ならその言語を母語とする人に一度読んでもらいます。誤訳は信頼を損ねる原因になります。
  5. 数か月ごとに見直す:口コミの言語や反応の実績を見て、言語の追加や翻訳範囲の拡大を判断します。1期間だけの結果で決めないようにしましょう。

宿泊施設の場合は、OTAの施設ページも多くの言語で表示されます。写真やプラン名の見せ方はOTAの施設ページ最適化の手順で紹介している考え方が、多言語でも土台になります。

ケース別:優先順位の決め方の例

3つの材料をどう組み合わせるか、よくある相談をもとにした想定ケースで見てみましょう。

ケース1:観光地の近くにある小さな飲食店

地域の統計では韓国・台湾からの旅行者が多く、Googleマップの口コミも英語と韓国語が中心。この場合は、英語でメニューと写真を整えたうえで、2つ目は韓国語と繁体字のどちらかから始めます。今回のデータのように、韓国語は表示が多くても来店行動の割合が低めに出ることもあるため、口コミの増え方や来店時の様子を数か月見比べて、2つ目を確定させると判断しやすくなります。

ケース2:駅から少し離れた小規模な旅館

予約はOTA経由が中心で、宿泊者の国・地域はOTAの管理画面で確認できる状態。まずは予約の国籍の上位を見て、2つ目の言語を決めます。翻訳の優先順位は、チェックイン方法や館内ルールなど「到着してから困ること」が先です。周辺の飲食店の案内まで多言語で用意できると、滞在の満足度にもつながりやすくなります。

ケース3:予約制の体験施設

体験の予約は事前にWebサイトで入ることが多いため、Webサイトのアクセス解析で、どの言語の閲覧が多いかを確認します。閲覧の多い言語と、実際に予約に至った国・地域を比べて、差が大きい言語は予約ページの翻訳や案内を見直す候補になります。

業種別:最初に翻訳したいもの

業種最初に翻訳したいものひと工夫
宿泊施設チェックイン方法、館内ルール、周辺の飲食・交通の案内よく聞かれる質問を1枚の多言語シートにまとめる
飲食店メニュー、注文方法、支払い方法料理の写真と食材のアイコン(アレルギー・宗教上の配慮)を添える
観光・体験施設所要時間、予約の要否、注意事項体験の流れを写真やイラストで見せる

よくある失敗と注意点

  • 最初から多くの言語に手を広げる:翻訳した情報の更新が追いつかず、営業時間やメニューが古いまま残りがちです。
  • 自動翻訳をそのまま掲載する:料理名や施設のルールなどは誤訳が起きやすい部分です。重要な情報ほど確認しましょう。
  • 表示回数だけで言語を選ぶ:前述のデータのように、よく見られる言語が来店につながる言語とは限りません。
  • Webサイトが日本語のみ:地図やOTAから詳しく知りたい人が来ても、日本語だけだと離れてしまうことがあります。まずは英語の1ページからでも用意しましょう。公式サイトの整え方は直予約を増やすステップも参考になります。

よくある質問

英語だけで十分ですか?
最初の一歩としては英語だけでも意味があります。そのうえで、来ている国・地域が偏っている場合は、その言語を2つ目に加えると、より伝わりやすくなります。
韓国語は優先度が低いのですか?
一概には言えません。今回の事例では来店行動につながる割合が低めでしたが、地域や業種によって結果は変わります。自施設の口コミや予約の国籍で、実際の傾向を確かめてください。
繁体字と簡体字、どちらに対応すればよいですか?
来ている旅行者の国・地域で決めます。台湾・香港からが多ければ繁体字、中国本土からが多ければ簡体字が基本です。
翻訳は機械翻訳でも大丈夫ですか?
手間を減らすために使うのは有効です。ただし、メニューや料金、ルールなど誤解されると困る情報は、可能な範囲でその言語を母語とする人に確認してもらうのがおすすめです。
言語を増やすタイミングはいつですか?
今の言語の情報を最新に保てていて、特定の国・地域からの来店や口コミが増えてきたときが目安です。数か月分の傾向を見て判断しましょう。

まとめ:少ない言語を、丁寧に

POINT・1つ目は英語。今回の運用データでも来店行動の5〜6割を占めた
・2つ目以降は、地域の傾向・自施設の客層・反応の実績の3つで選ぶ
・よく見られる言語と、来てくれる言語は一致するとは限らない
・言語ごとに翻訳する範囲を決め、更新し続けられる量にとどめる

多言語対応は、言語の数よりも「情報が正確で、新しいこと」が信頼につながります。まずは今月、外国語の口コミがどの言語で書かれているかを数えてみるところから始めてみてください。

※本記事は2026年10月時点の一般的な情報と、札幌市内の飲食店での広告運用データ(数値は幅で表記)をもとにした編集部の見解です。特定のサービスの利用を勧めるものではなく、同様の成果を保証するものではありません。

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この記事を書いた人

働く女性・共働き世帯の住まい選び(不動産・住宅ローン・防犯)と、宿泊・旅行業の集客(OTA運用・女性客マーケティング)を専門に、一次情報と実務目線で記事を制作するenrike編集部。金融・不動産・税などのYMYL領域は専門家の監修方針のもとで発信しています。

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