共働き世帯は、2人分の収入を合わせて審査を受けられるため、片働きより大きな金額を借りやすくなります。ただし、その金額は2人ともフルタイムで働き続ける前提で計算されていることが少なくありません。出産・育児・転職・介護などで収入が変わる可能性があるのが、共働きの住宅ローンの難しいところです。
読み終えるころには、「うちの世帯なら、毎月いくらまでなら無理なく返せるか」を、自分たちの数字で計算できる状態を目指します。なお、実際に借りられる額は金融機関・商品・勤務先・他の借入などで変わります。ここで紹介するのはあくまで考え方の目安です。
結論:「借りられる額」ではなく「毎月返せる額」から逆算する
金融機関の審査で出る「借入可能額」は、金融機関が貸せる上限であって、生活が苦しくならない額とは限りません。審査では、教育費や老後資金、旅行・趣味などの支出がどれだけあるかまでは見られないためです。
そこでおすすめなのが、次の順番で考える方法です。
- 毎月の手取りを合算する:ボーナスは「ないもの」として、月の手取りで考える
- 毎月の返済額の上限を決める:手取りに対する割合で仮置きする
- 収入が減る時期の家計で検証する:産休・育休・時短の期間を想定する
- そこから借入額を逆算する:金利・返済期間を仮置きして計算する
- 金融機関の審査上限と見比べる:上限いっぱいは避け、余裕を残す
共働きの借入額を考える3つの物差し
①年収倍率:手軽だが「目安」にすぎない
年収倍率とは、借入額が世帯年収の何倍かを示す数字です。たとえば世帯年収が800万円で借入額が4,000万円なら、年収倍率は5倍です。物件選びの入口として使いやすい一方、金利・返済期間・他の借入・家族構成が反映されないため、これだけで上限を決めるのはおすすめできません。
「年収の◯倍まで」といった目安は雑誌やネットでよく見かけますが、公的な基準があるわけではありません。同じ年収倍率でも、金利が上がると毎月の返済額は大きく変わります。「倍率は参考値、決め手は毎月の返済額」と考えておきましょう。
②返済負担率:金融機関が見る「年収に対する返済の割合」
返済負担率は、年収に対する年間の返済額(他のローンを含む)の割合です。住宅金融支援機構の【フラット35】では、年収に応じて、総返済負担率の上限が定められています(年収400万円未満は30%以下、400万円以上は35%以下。最新の基準は機構の公式情報で確認してください)。民間の金融機関も、独自の基準で審査するのが一般的です。
ここで大切なのは、この数字が「借りてよい上限」であって「無理なく返せる水準」ではないという点です。返済負担率が35%近いと、税・社会保険料を引かれた手取りベースでは、返済が家計をかなり圧迫します。額面ベースの数字と、手取りベースの数字を分けて考えましょう。
③手取りに対する返済額:いちばん生活実感に近い物差し
家計の目安としては、毎月の手取り(世帯合算)に対して、住宅ローンの返済額を2〜3割程度までに抑えるという考え方が、よく紹介されています。一般的な目安であり、誰にでも当てはまる正解ではありませんが、固定資産税・管理費・修繕積立金・火災保険など、ローン以外の住居費も含めて「手取りの◯割」で見ると、住んだ後の家計をイメージしやすくなります。
借入額と毎月の返済額のイメージ
借入額と毎月の返済額の関係をイメージするために、返済期間35年・元利均等返済・ボーナス払いなしで、金利を2パターンで試算した概算を紹介します(金利は仮定の数字で、将来の金利を予測するものではありません)。
| 借入額 | 金利1.5%の場合(概算) | 金利2.5%の場合(概算) |
|---|---|---|
| 3,500万円 | 月約10.7万円 | 月約12.5万円 |
| 4,000万円 | 月約12.3万円 | 月約14.3万円 |
| 5,000万円 | 月約15.3万円 | 月約17.9万円 |
同じ4,000万円でも、金利が1ポイント違えば毎月の返済額は約2万円変わります。変動金利を選ぶ場合は、金利が上がったときの返済額(金利上昇後の試算)でも家計が回るかを、あらかじめ確かめておくと安心です。
産休・育休・時短を見込んだ「安心できる上限」の決め方
共働き世帯で最もつまずきやすいのが、収入が一時的に下がる時期です。出産前後の産休・育休中は、給与が支払われない代わりに、健康保険や雇用保険から手当・給付金が支給されるのが一般的ですが、金額や期間は制度や勤務先、加入状況で変わります。制度の最新内容は、協会けんぽ・健康保険組合・ハローワークなどの公式情報で確認しましょう。
復職後も、時短勤務で手取りが下がる時期が続くことがあります。「2人ともフルタイムで定年まで働く」ではなく、収入が下がる時期でも返せる額で考えるのが、共働きの住宅ローンの基本です。
- ふだんの手取りを書き出す:2人分の月の手取り(ボーナス除く)を合算する
- 収入が下がる時期を想定する:どちらかの収入が一定割合下がった場合の世帯手取りを仮置きする
- その期間の毎月の支出を出す:生活費・保育料・保険・貯蓄などを書き出す
- 返済に回せる額を出す:下がった時期の手取りから、住居費全体に回せる額を求める
- その額で返せる借入額を逆算する:上の試算表のように、金利を2〜3パターンで確認する
収入が下がる時期の返済を「貯蓄で補う」前提にする場合は、どれくらいの期間、いくらまで取り崩せるかも決めておきます。住宅購入の頭金や諸費用で貯蓄を使い切ってしまうと、この「いざというときの余力」がなくなってしまいます。
世帯タイプ別の考え方(想定ケース)
以下は、よくある相談例をもとにした想定ケースです。数字は説明用の仮定であり、実在の個人・事例ではありません。
ケース1:これから子どもを考えている共働き夫婦
2人ともフルタイムで働いている段階では、返済負担率には余裕があるように見えます。ただし、出産・育児期に入ると、世帯の手取りが一時的に下がり、保育料や教育費などの支出が増える可能性があります。子どもが生まれる前後の数年間の家計を基準に上限を決めると、無理が出にくくなります。「子どもが小さいうちは繰上返済や貯蓄が難しい」前提で考えるのがポイントです。
ケース2:すでに子育て中で、時短勤務の人がいる世帯
時短勤務で収入が下がっている場合、その収入が「今後も続く」のか「いずれフルタイムに戻る」のかで、見通しが変わります。審査では現在の収入が基準になりますが、家計の検討では現状維持と復職後の2パターンを作っておくと判断しやすくなります。収入が戻ることを前提にした借入は、戻らなかった場合に家計が回るかを事前に確認しておきましょう。
ケース3:夫婦の収入に大きな差がある世帯
収入が大きい側の働き方(転職・異動・休職)が、世帯の返済力を大きく左右します。どちらか1人の収入だけでも最低限の返済ができるかを確認しておくと、リスクを抑えられます。誰がどのくらい返すかを決めておくことは、ローンの組み方(ペアローンや収入合算など)の選択にも関わります。夫婦で話し合うときは、収入の多い少ないで役割を決めつけず、お互いの働き方の見通しをそろえることが大切です。
ケース4:子どもを持たない予定の共働き世帯
育児による収入減は想定しにくい一方、2人とも働き続けることが前提になりやすく、どちらかの退職・転職・病気・介護などへの備えが論点になります。老後資金の準備や、定年後の返済負担(完済時の年齢)もあわせて考えておくと、長い目で見て無理のない上限を決めやすくなります。
借りすぎを防ぐためのチェックリストと注意点
- 住居費全体で考える:返済額に管理費・修繕積立金・税金・保険を足して、手取りに占める割合を確認する
- 金利上昇を試算する:変動金利なら、金利が上がった場合の返済額でも家計が回るかを確認する
- 収入が下がる時期の家計を作る:産休・育休・時短・どちらかの転職を想定する
- 貯蓄を使い切らない:頭金・諸費用を出したあとも、生活費の数カ月分などの予備資金を残す
- 他のローンを整理する:自動車ローンや奨学金の返済が、審査や家計に影響する場合がある
- 完済時の年齢を確認する:返済期間を延ばすと月々は下がるが、総返済額と定年後の返済負担が増える
共働きのローンの組み方ごとの違い(ペアローン・収入合算など)や、離婚時の整理については、ペアローンで離婚したときの整理と選択肢が参考になります。また、減税制度(住宅ローン控除)の条件は、床面積などで利用できるかが変わるため、住宅ローン控除の床面積の条件と落とし穴で確認しておきましょう。
購入そのものの判断(資産価値・立地・売却のしやすさ)については、マンション購入で後悔しないための判断軸の考え方も、共働き世帯に通じる部分があります。
よくある質問
まとめ
まずは、2人分の月の手取りを書き出して、「収入が下がる時期の家計」を1枚作ってみてください。そこから逆算した借入額が、自分たちにとっての上限です。
※本記事は2026年10月時点の一般的な情報であり、個別の借入額や返済計画を保証・推奨するものではありません。金利・審査基準・制度は金融機関や時期により異なります。最終判断は金融機関・ファイナンシャルプランナー・税理士等の専門家にご確認ください。
