住宅ローン控除(正式名称:住宅借入金等特別控除)は、ローンの年末残高に応じて所得税などが軽減される制度です。令和8年度の税制改正で適用期限が延び、コンパクトな住まいの扱いも変わりました。ネット上には改正前の情報も多く残っているため、「いつ入居するか」を基準に読み分けることが大切です。
本記事は、国税庁タックスアンサー(令和8年4月1日現在法令等)と国土交通省の公表資料をもとに、2026年10月時点の内容で解説しています。個別の適用可否や税額は、税務署・税理士にご確認ください。
結論:2026年以降入居の「40㎡ライン」早見表
まずは全体像です。令和8年1月1日〜令和12年12月31日に入居する場合、床面積と所得によって次のように整理できます。床面積は登記簿(登記事項証明書)に記載された面積で判定されます。
| 登記簿の床面積 | 所得要件(その年の合計所得金額) | 子育て世帯等の上乗せ |
|---|---|---|
| 50㎡以上 | 2,000万円以下 | 対象になり得る(認定住宅等の場合) |
| 40㎡以上50㎡未満 | 1,000万円以下 | 対象外 |
| 40㎡未満 | 控除の対象外 | |
・40㎡台は所得1,000万円以下が条件。超えた年は控除を受けられません
・40㎡台では子育て世帯・若者夫婦世帯の借入限度額上乗せは使えません
・新築は省エネ性能の要件があり、40㎡台の新築は原則として「認定住宅等」(省エネ基準適合以上)であることが必要です
「40㎡あれば大丈夫」と思いがちですが、実際には面積の測り方・所得・住宅の省エネ性能・家族構成の4つが絡み合います。以下で順番に見ていきます。
住宅ローン控除の仕組みと令和8年度改正のポイント
控除額は「年末残高×0.7%」が基本
住宅ローン控除の控除額は、原則としてその年の年末のローン残高×0.7%です。ただし、住宅の種類ごとに「借入限度額」が決まっていて、残高がそれを超えていても限度額までしか計算に使えません。また、住宅の取得対価が残高より少ない場合は取得対価が基準になります。
所得税から控除しきれない分は、上限の範囲内で翌年度の住民税から差し引かれる仕組みもあります(令和8年度税制改正の大綱では、令和8〜12年入居分について、所得税の課税総所得金額等の5%(上限9.75万円)を限度とする方針が示されています)。手取りへの影響は人によって大きく異なるため、具体的な金額は税務署や税理士に試算してもらうと安心です。
令和8年度改正で変わったこと
国土交通省の公表資料によると、令和8年度税制改正の主な内容は次のとおりです。
- 適用期限を5年延長(令和8年1月1日〜令和12年12月31日の入居が対象)
- 省エネ性能の高い既存住宅(中古)の借入限度額を引き上げ、控除期間を13年に拡充
- 既存住宅にも子育て世帯・若者夫婦世帯の上乗せ措置を導入
- 床面積40㎡以上に緩和する措置を既存住宅にも適用
- 令和10年以降に建築確認を受ける新築の「省エネ基準適合住宅」は原則対象外
- 令和10年以降の入居では、土砂災害特別警戒区域などの「災害レッドゾーン」にある新築住宅は対象外(建替え・既存住宅・リフォームは対象)
| 住宅の区分(令和8〜12年入居) | 新築 | 既存(中古) |
|---|---|---|
| 認定長期優良住宅・認定低炭素住宅 | 4,500万円(5,000万円)×13年 | 3,500万円(4,500万円)×13年 |
| ZEH水準省エネ住宅 | 3,500万円(4,500万円)×13年 | 3,500万円(4,500万円)×13年 |
| 省エネ基準適合住宅 | 令和8・9年入居:2,000万円(3,000万円)×13年 令和10年以降入居:原則対象外(経過措置あり) | 2,000万円(3,000万円)×13年 |
| その他の住宅 | 原則対象外(令和5年末までの建築確認等の経過措置あり) | 2,000万円×10年 |
※金額は借入限度額、カッコ内は子育て世帯・若者夫婦世帯(後述)の場合。出典:国土交通省「令和8年度住宅税制改正概要」(令和7年12月26日報道発表資料)、国税庁タックスアンサーNo.1211-1・No.1211-3(令和8年4月1日現在法令等)。新築の省エネ基準適合住宅は、令和9年末までに建築確認を受けたもの等について、令和10年以降入居でも借入限度額2,000万円・10年の経過措置があります。宅地建物取引業者がリフォームして販売する「買取再販住宅」は別の区分で、借入限度額・期間が上の表と異なる部分があるため、国税庁タックスアンサーNo.1211-2で確認してください。
この表のカッコ内の上乗せは、40㎡台の住宅では使えない点が重要です。次の章からは、コンパクトな住まいを検討する人が特につまずきやすいポイントを掘り下げます。
「40㎡」は登記簿の内法面積で判定される
パンフレットの面積と登記簿の面積は違う
マンションの販売図面や広告では、壁の厚みの中心線で測る壁芯(へきしん)面積で表示されていることがあります。どちらの面積かは、図面や重要事項説明書の注記で確認できる場合があります。一方、不動産登記規則第115条では、マンションのような区分建物の床面積は壁などの内側線で囲まれた部分(内法・うちのり)で測ると定められています。
国税庁は、住宅ローン控除の床面積を「登記事項証明書」に表示されている面積で判断し、マンションは共用部分を含めない専有部分の面積で判断すると説明しています。つまり、広告上は40㎡を少し上回っていても、登記簿では40㎡を下回ることがあり得るのです。壁の厚さや柱の位置で差は変わるため、「何㎡あれば安心」とは一概に言えません。
戸建てと共有名義の場合
戸建てなど区分建物でない建物は、登記上も壁の中心線で測るため、マンションほどの差は出にくいとされます。また、夫婦や親子の共有名義で購入する場合、床面積は持分を掛けて按分するのではなく建物全体(マンションは専有部分全体)で判断されると国税庁は説明しています。ペアローンでも「持分が半分だから面積も半分」とはなりません。
このほか、床面積の2分の1以上を自分の居住用に使っていること、取得から6か月以内に住み始め、控除を受ける年の12月31日まで引き続き住んでいること、返済期間10年以上のローンであることなども共通の要件です。ここで挙げたのは主な要件の一部で、親族からの取得でないこと、居住用財産の譲渡の特例との併用制限なども定められています。すべての要件は国税庁タックスアンサーで確認してください。
ケース別:単身・共働き・子育て世帯の判断ポイント
単身で40㎡台の新築マンションを検討する場合
新築は、省エネ基準に適合しない「その他の住宅」が原則として対象外です。40㎡台の新築で控除を使うには、原則として認定住宅・ZEH水準省エネ住宅・省エネ基準適合住宅のいずれか(国税庁の用語で「認定住宅等」)であることが必要です(令和5年末までに建築確認を受けた住宅の経過措置を除く)。証明書類は売主や施工者側の協力がないと用意しにくいため、契約前に「どの区分で、どの証明書が出るか」を確認しておきましょう。
また、令和10年以降に入居する新築の省エネ基準適合住宅は原則対象外になるため、引き渡しが2028年以降にずれ込む物件では区分の確認がいっそう重要です。単身での購入全般の注意点は独身女性のマンション購入でよくある後悔もあわせてどうぞ。
中古の40㎡台マンションを検討する場合
令和8年以降の入居では、中古でも登記簿40㎡以上50㎡未満なら対象になり得ます(所得1,000万円以下が条件)。中古の場合は、昭和57年以降に建築されたものか、耐震基準への適合が証明されたものであることなども求められます。
中古は省エネ性能の証明がない「その他の住宅」でも対象で、借入限度額2,000万円・控除期間10年です。省エネ基準適合以上であることを証明できれば控除期間13年の区分になるため、仲介会社や売主に性能証明の有無を尋ねてみる価値があります。
共働きでペアローンを組む場合
ペアローンでは、それぞれが自分の借入について要件を満たせば、二人とも控除を受けられる可能性があります。所得要件は控除を受ける本人のその年の合計所得金額で見るため、40㎡台の住まいでは「一人は1,000万円以下だが、もう一人は超える」といったケースも考えられます。
連帯債務の場合は、各自が負担すべき割合などに応じて控除の対象となる借入金の額が決まると国税庁は説明しています。また、所得要件は年ごとの判定です。昇給や副業で1,000万円を超えた年はその年の控除を受けられない一方、産休・育休などで所得が下がる年は所得税が少なく、控除枠を使い切れないこともあります。ローンの組み方(ペアローン・連帯債務・連帯保証など)によって控除を受けられる人や対象額が変わるため、金融機関と税務署で確認を。ペアローンのリスク面はペアローンと離婚時の対策で詳しく解説しています。
子育て世帯・若者夫婦世帯の場合
借入限度額の上乗せを受けられる「特例対象個人」は、国税庁によると次のいずれかに当てはまる人です。判定は入居した年の12月31日時点で行います。
- 年齢40歳未満で配偶者がいる人
- 年齢40歳以上で、40歳未満の配偶者がいる人
- 19歳未満の扶養親族がいる人
ただし、40㎡台の住宅では上乗せを使えず、上乗せを利用するなら登記簿50㎡以上が必要です。国交省のQ&Aでも、子育て世帯が40㎡台の既存住宅を購入した場合は上乗せの対象にならず、住宅性能に応じた通常の借入限度額になると示されています。家族が増える予定がある場合は、控除だけでなく間取りや住環境も含めて検討したいところです(子育て世帯のマンション1階と足音問題も参考に)。
契約前の確認チェックリスト
40㎡台・50㎡前後の物件を検討しているなら、申込みや契約の前に次の順で確認しておくと、後から「対象外だった」と気づくリスクを減らせます。
- 入居予定年を確認:令和8〜12年の入居か。新築は引き渡し時期のずれも想定する
- 登記簿(予定)面積を確認:広告の壁芯面積ではなく、内法の登記面積が40㎡・50㎡の線を越えているか。中古は登記事項証明書で確かめる
- 自分の所得を確認:40㎡台なら合計所得金額1,000万円以下か。今後の昇給・副業収入の見込みも考える
- 住宅の省エネ区分を確認:認定住宅・ZEH水準・省エネ基準適合・その他のどれか。証明書(住宅省エネルギー性能証明書、建設住宅性能評価書など)を誰が用意するか
- 中古は築年・耐震を確認:昭和57年以降の建築か、耐震基準適合の証明があるか
- 立地を確認:令和10年以降入居の新築なら、災害レッドゾーンに当たらないか自治体のハザード情報で確かめる
- ローンの組み方を確認:単独・ペアローン・連帯債務など、誰が控除を受ける立場になるか
- 初年度の確定申告を準備:会社員でも1年目は確定申告が必要。登記事項証明書や証明書類を早めにそろえる
会社員の場合、2年目以降は税務署から届く書類と金融機関の年末残高等証明書を勤務先に提出し、年末調整で手続きできます。
よくある失敗と注意点
改正前の記事を見て判断してしまう
「中古は50㎡以上でないと対象外」「中古の控除期間は10年」といった説明は、令和7年までの入居を前提にした情報です。逆に、令和8年以降の情報を、すでに入居済みの年に当てはめることもできません。記事の公開日ではなく、自分の入居年に合った制度かを確認する習慣をつけましょう。
「40㎡台=上乗せも使える」と思い込む
若い夫婦がコンパクトな2LDKを選ぶ場合などに起こりやすい誤解です。40㎡台は控除の対象にはなり得ても、上乗せ分は使えません。資金計画を立てるときは、上乗せなしの借入限度額を前提に考えておくと見込み違いを防ぎやすくなります。
40㎡台を選ぶメリット
- 物件価格や管理費・修繕積立金を抑えやすい傾向
- 令和8年以降は中古も控除の対象になり得る
- 単身・二人暮らしの生活サイズに合わせやすい
40㎡台の注意点
- 所得1,000万円超の年は控除を受けられない
- 子育て世帯・若者夫婦世帯の上乗せが使えない
- 登記面積が40㎡を切ると控除の対象外になる
よくある質問
まとめ:40㎡台は「面積・所得・性能・入居年」の4点確認を
令和8年度の改正で、中古を含むコンパクトな住まいにも住宅ローン控除の道が広がりました。一方で、40㎡台には所得や上乗せの制限があり、登記簿の面積が少し足りないだけで対象外になることもあります。
・40㎡台は所得1,000万円以下が条件、子育て・若者夫婦の上乗せは対象外
・令和8年以降入居なら中古の40㎡台も対象になり得る。新築は省エネ性能の区分が前提
・制度は入居年で変わるため、契約前に国税庁・国交省の最新情報と専門家で確認を
※本記事は2026年10月時点で確認できた国税庁タックスアンサー(令和8年4月1日現在法令等)および国土交通省の公表資料に基づく一般的な情報であり、個別の税務相談に代わるものではありません。制度・要件は改正される場合があります。実際の適用可否や控除額は、所轄の税務署・税理士、借入については金融機関等の専門家にご確認ください。
